望んだ人生を諦めたら感謝が湧くという話

「感謝しましょう」「1日のうちで感謝できることを見つけましょう」「感謝ノートをつけましょう」、感謝について多くの人がその効能について語っています。感謝することが体にも心にも良いことは文献や体験談を聞けば理解することができます。

ただ、私は頭でこのことを理解できても、日々の生活に心から感謝を抱くことができずにいました。確かに健康に生きていられるだけでありがたいし、コンビニ一つ取ってもその利便性に頭が下がります。だけど、私はどこか感謝を形式的にしか使っていませんでした。

意識的に感謝するときは、「感謝しておけば人生が良くなるんでしょ」という思いからでした。

私の本音は「心から感謝なんか湧かない」でした。
なぜそんなふうに思っていたのか。それは自分が望んだ人生が何一つ手に入っていなかったからです。

愛するパートナーも、結婚も、出産も、成功したキャリアも、知名度も、お金も、家も、何一つ私は手にしていないのに、感謝なんか湧くわけないでしょ、と思っていたのです。

自分の人生が望むような満ち足りたものであれば、感謝なんか勝手に湧くと思っていたのです。

もちろん、それも一理あります。でもこの時の私は気づいていなかったのです。
目の前の現実を無視して、まだ見ぬ理想の人生に執着することで、「今」目の前で感じられるはずの感謝に全く気づかずに生きていたのです。

私が目の前の現実に感謝が湧くようになったのは「望んだ人生」を捨てた時からでした。何年も何年も叶わない夢にしがみつくのは潮時でした。いい加減諦めたのです。そうすると認めたくない目の前の現実と向き合うことになります。望まない現実だけど、「これが私の人生なんだ」と受け入れるしかありませんでした。

でもその時から気持ちに変化が訪れたのです。目の前の現実がよりリアルになって感覚がクリアになる感じがしました。

未来の夢を捨てると、「今」目の前にある現実をどう楽しもうかということに意識が向いていきます。意識すると、目の前の現実の良いところをどんどん発見できるようになるのです。今までは未来にばかり意識が行っていたので、解像度の低い、どこかぼんやりとした視界で現実を見ていたことに気がついたのです。
未来を捨てたことで目の前の現実を見る視界がクリアになり解像度が上がったのです。より鮮明に現実の良いところを感じられるようになり、楽しい、嬉しいと思う時間が増えました。

そうなってくると、感謝というものは自然と湧き出すものです。

「今日はベビーシッターで〇〇ちゃんと一緒に笑ったあの時、楽しかったな〜。ありがたいなぁ。」
「単価の安いイラストのお仕事だったけど、お客さんが予想以上に喜んでくれて嬉しかったなぁ。」
「暑かったけど花の水やりが気持ちよかったな〜」

というふうに、目の前の毎日がキラキラし出したのです。

理想の未来を捨てると、目の前の現実が全てになります。
目の前の世界が生き生きと彩り始めるのです。

私は今までも依頼を受けた仕事は手を抜かずに頑張っていましたが、どこか「未来のため」「生活のため」という気持ちがありました。もちろんお金を稼がないと生活できないのでお金のために働くことは悪いことではありません。
でも「未来のため」と、まだ叶わぬ夢にばかり意識がいくと、足元がフワフワし、地に足がついていない状態になります。そうすると、目の前の現実に100％意識を向けるということができません。それは、仕事を依頼してくれる目の前にいる相手にとても失礼なことです。仕事だけでなく、家族や友人、仕事仲間に対してもそうです。

そうすると、何が起こるかというと、人生がずっとうまく行かない状態になるんですね。
例えば、理想の夢ばかり抱いて目の前の現実に50％の意識しか向けれないのなら、いくら自分は頑張っているつもりでも、50％の力しか出せてないことになります。目の前の現実が50％でしか進まないとすると、その先の未来も拡大するわけありません。

あたり前のことなのですが、私はこのことに全然気がつきませんでした。

掲げた夢や目標が叶ったら満ちたりて幸せで感謝が起こるわけではないのです。順番が逆だったのです。目の前の現実に100％向き合って幸せを感じ感謝するから、未来がより良きものになっていくのです。

恥ずかしながら、私は未来の夢を捨てるまでこのことに気が付きませんでした。

ベビーシッターのお仕事もイラストのお仕事も、以前と同じように大変なことや辛いな、と思うことは起きます。
以前だったら「辛い思いをしてまでこの仕事に労力をかけたくない」と、嫌なことに向き合うことを避けていたのですが、未来を捨てた今となっては目の前に起こることが全てです。逃げずに一つ一つと向き合って、試行錯誤の日々。自分の価値観を変える機会にもなり、結果的に収入や仕事の依頼が増えてきました。

これだけは言えるのですが、未来のことより目の前の現実に集中することで、必ず物質的な結果が出ます。物質的な結果だけでなく、目の前の人が喜ぶ姿を目にして、心も満たされます。そうすると、感謝は自然と沸き起こるのです。感謝がわくと、心身に良い影響があります。睡眠の質が上がったり、免疫力がついたり、他人と友好的な関係を作る筋力がついたり。そうすると、人生というものは良きものになっていきますよね。

まだ手に入らぬ理想の未来にしがみついて、今を不幸に生きるのなら、未来なんか捨てちゃって「今」目の前にある現実に100％向き合う方が幸せに生きられると思う、今日この頃です。

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